無垢材への想い

  

木心も木肌も申し分ありません。
又、少しの間、我孫子の空気を吸いながら眠ってもらいます。


無垢材の床板の在庫が無くなり、その都度、建材メーカーから既製品を
購入していたのですが思うような建材が手に入りませんでた。

少し時間が掛かりますが以前のように原木から製材をしてもらい自作しようと思い
以前、購入した製材所に連絡したのですが、2社とも連絡が付きませんでした。
止めて(廃業?)しまったようです

細い記憶を便りに長野県木曽の製材所と連絡が付き何とか製材してもらいました。
申し分の無い木曽桧、樹齢160年の原板、50坪分が届きました。
製材所の気配りに感謝する次第です。


   


   

2015年4月1日

   

天井板の目合わせをしているところです。
通常,無垢材の天井板は一束一坪、四坪口(八畳)で販売されて
いるのですが、これ程の幅広ですと、一木、同目で揃えることは不可能です。
幾束かを解き同じような木目を拾い出します。
目合わせといいます。かなり妥協しないと木目が揃いません。



以前は製材後、挽き立て材で、(荒木のまま)販売されていたのですが、
大工の手間の省略工程と思いますが、製材後、電動ワイヤーブラシで板材の表面を加工し、仕上げとします。
板の夏目が沈み冬目が浮き出します。

この工程を、浮造りと言います。
このまま張り上げても良いのですが、余りにも、冬目がきつく杉独特の木肌の柔らかさが失われています。

この浮造りを削り取るのです。
無駄な工程と思いますが、できれば木地本来の姿を残そうと想っているのです。


当然、かなりの手間食い仕事です。
手作業だけが基本ではありません。
機械の使用も当然、必要です。
電気ガンナで荒削りします。


電気ガンナで荒削りした面を、荒い手ガンナで
削っていきます。この時の鉋を
あらしこかんな(荒四股鉋)といいます。

















仕上げ削りです。かなりの重労働です。
一日、削り屋をすると四里歩くそうです。


以前,作成した床板の在庫が少なくなりましたので檜の原板を購入しまし
た。
前回は、静岡産の天竜材を購入しましたが、
今回は、三重県の紀州材を購入しました。

  

約、二年余りの自然乾燥で、含水率を10〜15%に安定する頃が加工に適当な
時期かと思います。


建材メーカでは、強制乾燥で7%まで含水率を下げるそうです
この建材メーカーのこの工程が、木材に与えるダーメージは後記致します。




建材メーカの檜柱の人乾材です。
性能表示では7%とあります



自社製の乾燥材です。
含水率計が10%を示しています。
自然乾燥でも10%に落とすことは可能です




前回は、静岡産の天竜檜の上小節(節が少ない程、高価です)でした
が、今回は三重県の紀州材の一等材を(節が大きく安価です)を購入致
しました。
400枚(50坪)の大量の購入なので、産地が揃うのか不安でしたが、
節の姿や色合いが微妙な違いしか見られず、よく揃えてくれたと思います。

   


山主、製材所でも、商品価値の高い、無節材を大量に揃えるのは相当難し
いそうでが一等材でも、節の大きさ、流れ節、死節、木表加工、などの注文を
加えると、むしろ、無節材以上に苦慮するそうです。

特に、使用する材料の産地に、こだわりがあるわけではありません。

しかし、狭い日本の国土の中で、天竜地方と紀州地方では、それ程の距離差
があるわけではありませんが、我々では知り得ない紀州地方と天竜地方に育
生する木には、木心、木肌に微妙な違いが見られます。
天竜地方では富士山を背中にし、温暖な気候ですが、育成している木は、芯が
強く、堅い木心に思えます。
紀州地方は日本有数の豪雨地帯ですが、育成している木は、その気候に反し
て穏和な赤身を帯びた木肌をしています。
狭い日本列島の僅かな距離差で、これ程の木心、木肌の違いが見られます。

我が国では、このほかに北の秋田杉、南の屋久杉、など多くの素晴らしい森に
育まれているのです。

又、地元、千葉にも個性の強い木心を持つ山武材があります。

まだまだ、国内材には未知、未使用の木種がたくさん存在しています。
本来、外材などが入る余地はないのです、我々、職人の勉強不足と無知が
内地材の荒廃の一因を招いているのは確かです。



長期間、自然乾燥を行うと原板一枚、一枚に様々な癖が必ず出ます
特に一等材の節板は激しく癖が出ます。(写真参照)
この、癖を出し尽くすのが、この長期間の自然乾燥の目的のひとつです。

丸太から製材する時点で、乾燥による材の歪み、縮を見越し仕上がり寸法
(105*15*4000o)よりは、大きめに製材しておきます。
原板は、(120*21*4300o)で入荷します。

歪み、反り、曲がりの出ている板を一枚一枚,機械作業にて取り除き正規の
寸法に仕上げて行きます。


  

板の側(そば)の歪みを、丸鋸で取る作業です。

  


  


  

板の凸凹を取っている作業です。
鉋屑が大量に出ます。

  


  


  



これ程の乱節ですと、手道具では全く歯が立ちません。
削ることも、切ることも、割ることも出来ず、薪にもなりませんのでいままでは
捨てていました..
しかし、近年の木工機械の高性能化、高度化が進み、木材、特に檜の節
の美しさは、機械加工によって生きていると思います。

つい最近まで、見向きもされず邪魔者扱いされていた材木が、新しく生かさ
れることは人にとっても、木にとっても、自然界にとってもいいことです。
手作業だけが、木を生かす事の出来る技術とは思いません。


斑(むら)取りの機械作業により、大鋸屑が大量に発生します。
今回、排泄される大鋸屑の総量は全材積の、33%にも達します。
400枚中、130枚は大鋸屑になってしまいます。
以前、産廃業者に恒常的に発生するのであれば、畜産業者が引き取りたいと
の問い合せがありましたが、安定した排出量には達せず、ゴミとして処理セン
ターで焼却しています。新建材と違い、co2、灰の排出は極少です。

檜の大鋸屑で育てた畜産とはどんなもんでしょうかね。
悪いわけがない。

他に、製材所などで、大量に発生する端材は、最新バイオ技術により再利用
が相当進んでいるようです


 




これは、廃材ではなく、まさしく資材です。

何故、これ程に無駄と暇を掛けるのか?
以前は、山主が原木を伐採し現地で葉枯らした(自然乾燥)後、製材所で
柱や板物に製材した材料を材木店が在庫していたのです。

しかし、近年、新建材に押され無垢材の使用が少なくなり、無駄が出て手間
暇のかかる無垢材は嫌われてきたのです。


建材メーカーのカットサンプルです。

人工乾燥ですと建材メーカーの資材は、すぐに手配が出来ます。
材木店も在庫の必要が無くなるのです。

我々、工務店も狂いのない規格の安定している人工乾燥材に移行していく
のです。これが新建材が建築市場に存在する大きな理由のひとつです。
今では、新建材が使われていない建物を探す方が難しいでしょう。

何故、これ程に無駄と暇を掛けるのか?
建材メーカーの建材も、使い勝手が良く、施主さんの希望で施工することが
多々あります。
集成材,積層材も、無垢材を可能な限り加工し、無垢材には無い特色を発揮し
ています。
しかし、以前から、建材メーカーの完成された製品には、特に無垢材には多くの
疑問や、不満を持ち合わせているのです。
木材の使用方法(木表、木裏、節)、塗装方法、等にはその木の持つ特性が全く
生かされていないのです。
又、一過性の製品が多く、数年で製造中止なり、リホーウム時に既存部分まで
張り替える事になってしまいます。

建材メーカーの製品サイクルの短さには閉口してしまいます。
その点、自社製の、無垢材製品は全く同じ加工工程ですので、時間経過後の
改築工事も日焼けの差は出ますが、既存部分まで改修する必要がありません。

日焼けの差も景色です。節も木の個性の表れです。

  




雄実、雌実の加工です。



特注で、注文した刃物です。その精度の高さには、只、驚くばかりです。

作業中に、節が(死に節)飛んでしまった板には、埋木をしていきます。

   


埋木には、梅の枝が最適とのこと、残念ですがそこまでは用意できませんで
した。赤身の材を使用し節に見立てました。


雄実、雌実の加工が済み、木裏に3本の反り止めかこうが済みました。
全て、木表加工しました。これも拘りのひとつです。

何故、これ程に無駄と暇を掛けるのか?

それは、実際に施工した物件の、経年変化に表れているのです。
無垢材床板の施工は、30年以上の長きになりますが一時期、
人乾材(建材メーカー)を使用したときの床板のみが檜本来の経年劣化の
変化を残していないのです。
無塗装品の人乾材の床板は、施工後2,3年で檜本来の経年変化ではなく、
木の表面が白化?し汚れてしまうのです。
本来なら、水拭きで緩和される汚れも木材に深く浸透し手の施しようもないの
です。
表面をウレタン塗装した床板も、いずれ歩行部分の塗料が剥離してしまい
汚れが浸透し、良い結果が出ていません。
無垢材の表面に耐傷性の高い、コーテング特殊加工した建材も開発されてい
ます。
これでは、美観は保てますが、無垢材の肌触りや温もりまでコーテングして
冷たさだけが伝ってしまいます。
しかし、残念なことに現代の洗浄剤でも、経年変色した無垢材は新築当時の
木肌色を、再現することは出来ません。
ひとつひとつの材が、「一期一会」です。
灰汁抜き(あくぬき)洗剤で洗浄しますと、木肌が真っ白になり、木目も確認で
きなくなってしまいます。
無垢材の汚れは、簓(ささら、竹を細くして箒状にしたもの)で水を含ませ汚れを
取っていきます。
以上が、人工乾燥された建材を、使用しなくなったひとつの理由です
新規の床板の仕上げ工程は、砥の粉(砥石を焼いて粉末状にしたもの)を水に
溶かして塗布するのみです。

年間受注棟数が少ない、当工務店ならはでの可能な無垢材の拘り
(こだわり)です。

  

仕上げ削りは機械の手を借ります。
機械では出来ないところ(逆目)等は手鉋で仕上げます。

  

削り済みの床板を、お互いの樹脂が写るのを防ぐために紙を挟み梱包していき
ます。



倉庫に積み重ね少しの間、自然乾燥します。
隣に積んであるのは、同様の杉板です

時間と、場所があれば、自然乾燥が木を生かせる事の出来る一番の
最良の方法ですが。
僅か、二、三十年前までは無垢材の多くは自然乾燥だったのです。

何故、これ程に無駄と暇を掛けるのか?

以前、記した、法隆寺,千年の柱の話。
石工の親方は「木は千年も経てば育つが、石は育たない

この話に、樹齢、40〜60年余りの木材を、町場の大工が後世に残せなくては
職人の意地が泣きます。

無垢材を、生木から扱わない職人が育つことにより、木を読めない職人
が育ってしまいます。
無垢材の扱いが無い、今の大工現場で育つ職人を、少しでも無垢材の
扱いをさせるのも、町場の大工の役目です。

これ以降は、以前、使用建材のページに掲載していたファイルです。




数年前、三重県尾鷲地方から取り寄せた杉木立の先端部分です。
柱材など木取りした後の余り材です。

太さ末口3p本で5p位長さ2m位ですが山元では処分に困る廃材です。
材木屋に無理を承知で購入をお願いし、雪の付いたまま運ばれました。

雨露のしのげる軒先に5年余り放置しますと
木肌と樹皮の間に虫が発生し物の見事な
生きた足跡を刻みます。
右側がまだ樹皮が付いたままの丸太です。
後、2.3年で虫が入ると思います。


何とも不思議な模様が出来ます。
使用箇所は数寄屋建築の天井棹縁、
日本霧除けの垂木など。

旧志賀直哉邸の天井に蝦蟇(がま)の網代、
棹縁にこの虫食いが使われていたと記憶しています。
やはり材料集めに数年掛かったそうです。

何とも言えない時間の経過と家づくりを感じました。



無垢材の使用に重きを置いて木取りし、
合板、新建材、の使用は必要最低限に止めています


人工乾燥、強制乾燥も出来るだけ避け、自然乾燥に心がけています



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